undergarden

凡庸性

展示を終えて東京へ戻ると、半月前の喧噪がそのままの形で部屋に残っている。懐かしいというよりもどこか他人の部屋のようで、暫く玄関に突っ立って眺めていた。出て行く時の、疲弊しきった身体を支えていた自尊心はすっかり吹き飛ばされてしまったが、生活から切り離された部屋にはまだ少し残っていて、それが少々愛おしくも思えたけれど、この中でもう生活は出来ないと掃除から始めた。確かに得られた何かはまだ輪郭すらぼんやりと淡い。焼き付いて離れないあの光景を目にした時に、カメラに伸ばした手を止めたのは何故か。勿体無いことをしたと思う反面、撮らなくて良かった、と思っている。きっと全てを撮りたいわけではない。
凡庸さ、という言葉を雨に濡れた軽井沢から車を走らせながら強く噛みしめる。それを見つめないとな、と。

松田直樹が死んだ。長野市出身ながら山雅の方に傾いてるだけに、松田の加入を驚きと共に喜んでいたのだが。残念。憧れ、とは別のリアリティを持って見た最初のプレーヤーだった。中学の時に松田は高校生で、同じポジションだったり、先輩が同じ高校に通っていたりで親近感を感じていたのかな。その後もこちらが成長すると共に、Jリーグ、代表と階段を登っていく姿を特に意識もせずに追っていた。代表から外れた時は悔しかったし、マリノスから戦力外通告された時は憤ってもいた。何だか、そういう選手だった。

Leave a Reply