スクワット
ポケットに手を突っ込んで小銭を取り出したが、五円玉がポロと転げ落ちた。そのまま手を伸ばして拾おうとしたけれど、物ぐさが遂に極まるようで膝を曲げてしゃがむと、その様がどこかぎくしゃくとスクワットのようになった。小学生の時から高校までサッカーをしていた割には、滅多にやらなかったけれど、でも懐かしい感じから、そのまま辛くなるまでやってみるか、という気が起きて手の内の小銭と五円玉をテーブルに置いて始める。辛くなるまで、と思ったものの、やはり数を声に出して数えてしまう。それがどうやらリズムになっているようだが、息がどこも震わさずに抜けてきたような掠れ声になっている。試しにしっかりと発音して声を出してみると、そこでもうやる気を失ってしまう。これ以上は駄目だ、と。再び声を抜くと、疲れも抜ける。五十回は無理そうだ、と四十回で止める。こんなことで情けないようだけれど、明日は筋肉痛になりそうな気配。明後日とか明明後日に出るようだったら、これこそ悲しむべきことか。