プリント
引き伸ばし機でプリントをしてみたが思っていた程の感動は無い。インクジェットプリンタで初めてプリントした時の方が感動していた気がする。ただデジタルプリントで抱えていた不満は欠片も無い。
考えてみれば幼い記憶にこの作業が残っている。薬剤の臭い、セーフライトの光、浮き上がる像。この感動の無い落ち着きは、だから安心感なのかもしれない。そもそもこれが写真だったのだから。そうやって記憶が始まっているのだから。モノクロを選んでいるのもここに原因があったのかもしれない。写真を嫌ったことによって大分遠回りをした。他の付き合い方があったろうか。そしてどこかの時点で同じようにプリントすることになっていただろうか。分かるはずもないけれど、まぁここまで時間を掛けなければいけなかったのは確かなように思う。時代の後押しも必要だった。成るようになった、と呆れつつ少々口角が上がる。
業務が立て込んでいるから作業の流れと結像の確認だけに止めようと思っていたが、気づけば6時間も経っていた。周りの方が薦めていた理由が良く分かった。経験しなければ見られないものがある。