転ぶ
歓送迎会で帰宅が夜中になり、欠伸も止まる暇もない程眠かったから一度は布団に潜り込むが、でもシャワー浴びたいな、と這い出た。そのまま寝ていれば良かった、と今は思う。ここの所の気持ちを落ち込ませる懸案をボンヤリと浮かべながらシャワーを浴びて、さて出ようか、と足を伸ばした瞬間、足を踏み外したようにつま先からツルっと滑る。あ、転ぶな、という意識はあるものの、眠気と懸案でその時には既に諦めていた。身体がドンッと叩き付けられる。一応、頭は打ち付けずに済んだものの膝と肘に激痛を感じて、諦めの中でもそれでも少しは堪えようとしたのかそれとも反射だったのか、手先が丁度スイッチに触れたようで、電気が消えた中、膝を抱えることも出来ずに転んだまま踞る。拭うこともなく流れ落ちる水滴は徐々に冷えて、身体を冷やしていく。痛みからというのもあるけれど、もう何か色んなことに悲しくなって立ち上がれず、やっと起き上がった時には、身体は冷えきっていて、皮膚がパリパリと裂けているようだった。立ち上がって電気のスイッチを入れると、床に打ち付けた右足の膝は膝の上に膝が出来たように腫れ上がっていて、それほど痛みを感じてはいなかった左足はサッシ部分に丁度打ったらしく脛のあたりが小さいけれどパックリと皮膚が割れていて、そこから血が溢れていた。拭き取って、取りあえずティッシュを当てて、ガーゼや消毒液を探すものの見つからず、ティッシュをテープで軽く止め布団に入るが、痛みで簡単には寝付けず、朝方にやっと薄い眠りに付けたようだった。