3ヶ月
稲刈りを終えたばかりの田が広がり、すぐ目の前には小高い山が迫る。そんな所にある家にお邪魔する。その家には孫(と猫)の身長を刻んだ柱があり、それぞれの節目で撮られた記念写真が並ぶ。だがカレンダーは7月で止まっていた。たぶん、何もかもが7月のまま。布団は先ほどまで寝ていたかのように捲れていて、キッチンには洗ったままの食器。居間に用意されている湯飲み。読みかけであろう本。空気もそのまま残っているようで、会った事も話したこともない人の家なのに懐かしさと安心感に包まれる。人間を感じる、ということだろうか。皮膚の上をふわっと通り抜けて行く。決して掴めはしないのだけれど。今後、会う事があるのかもわからないけれど、勝手に初めての挨拶は済ませた気になった。
写真県展の授賞式へ。新人と言っても年配の方が多い。こういう場だからかカメラを構える人が多く、でもやはりと言うか、歳の数だけカメラの金額も増していた。そのまま展示会場に行き入賞作品を見る。何て言うか悲しい現実がそこにある感じ。暫くして森山大道の講評が始まり、人が取り囲む。お爺さんが多く、あの独特な匂いで会場が満たされる。輪の中の同年代らしき人が持っていたカメラは授賞式会場ではカバーが付いていて分からなかったがよく見たらライカM6で、年齢じゃないんだな、と。人の波に疲れてしまい、さっさと会場を出た。森山大道は案外小柄。