伯父になった日…
プライスレス。なんて浮かれても良いじゃないか、つて。昼過ぎに出産の連絡があり母の帰宅を待って病院に行く。これまで、そうドキドキとした嬉しさを表に出す程感じてはいなかったものの、今日はまだ産まれる前から不安を伴った緊張と過ごしていた。あれが家の子、とガラス越しに指差す風景を思い描いていたのだが、病室に入ると妹の横に赤ちゃんが寝ていた。驚く程小さく、そして不細工。でも可愛い(醜いから、などとは違う)。可愛いと能動的に思わされているんじゃないかとも思う。そんな力をあの小さな身体は発していた。頬を突ついてみると反発が0に近い感触で頬が窪む。抱いてみてよ、と言われるがこれは断る。何とも怖い、色々と。抱いた瞬間に全てが無くなってしまうんじゃないだろうか。
病院の帰りに母と定食屋にて夕食。2人で外食なんて今まで無かったと思う。婆と伯父になった2人。これからの心配を述べたり、婆ちゃんと呼ばせるよ、と言うと嫌がる母だが嬉しそう。喜びの比較なんて出来ないけれど、問題が多々あった2人をずっと誰よりも近くで見ていたから、誰よりも喜んでいることだと思う。妹が産まれた頃の母の姿を覚えていたのか、母が赤ちゃんを抱いた姿をひどく懐かしく感じた。
連日病院に通うように行って、半ば無理矢理だったがやっと赤ちゃんを抱いた。構えた腕に近づいてくるにつれ身体から発せられる体温が感じられてこちらの緊張を誘う。腕に収まるとこちらは微動だに出来ないんじゃないか、と身体を硬直させた。赤ちゃんからは暖かいというよりは熱い、そして温い生き物特有の熱が発せられていた。抱き合う、のと同じで肌を接するのは心地良い。相手が無抵抗なのを良いことに抱きまくりそうだ、って泣いちゃうか。