undergarden

片道260円

出勤ラッシュの時間も過ぎ、昨晩積もった雪も大通りでは路肩を除けば溶けてしまっているのに、未だ車が長く連なっているのはやはり雪の為だろうか、それとも時期的なことからだろうか、と久しぶりの路線バスに揺られながら朝、車で出勤していた過去の記憶を探るが全く分からない。予めポケットに分けてあった乗車料金が10円足りず、降りるときになって両替。駅前までどこのバス停にも止まることがなかった乗客数を考えれば値上げも仕方がないな、と思ったがその記憶にもあまり自信は持てない。霜焼けになりそうな足の小指が時折疼く中、同じところを何度も踏みしめているような緩い坂道に、ちゃんとしたブーツが必要かしら、と一応はブーツを履いている足下を見つつマフラーを回し直して、再び降り始めた雪の中を歩く。
展示が終わる。思わぬアクシデントによって様々なものを削った報いを求めて少々浅ましい欲を出してしまった為に作品を見えにくくしてしまったなと反省していたけれど、最終日に催されたクロージングパーティに訪れた幼児たちが映像作品に興味を惹かれている姿を見て救われた。あの反応の先に作品を置いていたから。まぁでも個人的には今年始めた植物のモノクロプリントが良い感じになってきたので、こちらを暫く続けようかな、と。
夕方になると頭の上に雪が積もるほどの降りになった。搬出が終わり、寂しいような悲しいような気持ちを抱えていたからか、実家の最寄のバス停を通る路線では一番遠い所まで行くバスに、そのまま山奥まで行ってしまおうか、と考えながら、250円、いや260円だった、と財布を開く。

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