空虚
実家に帰ると母が出かける準備をしていた。一度出て行ったが煙草を取って、と戻ってきた。作り置きしてあった夕食を盛り、TVを見ながら頬張る。食べ終わってさて、と腰を上げようとすると妹が帰ってきて、寂しい、と言いながら居間に入ってきた。なんと、一人で信州新町の花火に行っていたみたい。浮かせた腰を落として更に2時間程妹と喋りながら過ごす。途中、妹がギターを出してきたので、久しぶりに触る。指の先がもう柔らかくなってしまっていて痛い。コードも忘れた。昨日あった高校のOB会で後輩の名前すら忘れていたのだからこれも仕方無い。それ程触っていなかった。また始めようか、と思って元々は私の物であったギターを持ち帰ろうとしたが妹許さず断念する。時間が出来たら買いにでも行こうか。というか時間は作らねば無いだろうなぁ。昨日、見えない様に覆って拒絶していた気持ちが唐突に表に出てきて風雨に曝された。思わず狼狽える。どうしようもない現実にその気持ちを一旦は放り投げてしまったが、向き合わなければならない現実と拒絶する意味の無意味さが分かって引き戻した。だけれど、やはり今日一日は空っぽだった気がする。