薄いコーヒー
仕事の撮影先で出してもらったコーヒーが紅茶かと思うほど色が薄くて、ミルクを入れると底で渦を巻くのがくっきりと見える。もちろん味も薄くてコーヒー風味のお湯というのに近かった。その味が薄いくせにいつまでも舌に残る。濃いコーヒー、いやコーヒーと名のつくものならあの味よりも濃いはずだ、と喫茶店に入るが微かな味の上をコーヒーというものが通り過ぎるだけで一向に舌から離れようとせず、次第に外部との繋がりも薄く薄くなった。インプットされる自分とアウトプットする自分の距離が10m、20m、30mと離れその分タイムラグが生まれる。アウトプットする時にはもう次の状況が迫っていて、あ、と発声するだけに終わったりし始める。こんな時に限って外部からの連絡が頻繁にあって、どんどんと濃くしよう濃くしようとしてくる。唯一、一方的に選択していくだけの電話の音声案内の声だけが何をも含まない無味であった。