undergarden

令和元年

例年と変わらず家族とゆく年くる年を観てから帰路についたが途中でスタックした車が道を塞いでおり、雪の中ただJAFを待ってもいられないので牽引救出して自宅に戻ったのは午前2時頃だったか。山中に住んでいればこんなこともあるか、彼らはその後無事に山を下りられただろうか、と考えつつ冷えた身体を風呂で温めたのが2019年の始まりだった。

考えてみればあれは波乱な年の前兆だったのかもしれない。公私に渡り想定外の事態が次々と起こり、予定などあってないようなものだった。こちらが片付けばあちらが起こり、あちらを仕舞うと明後日の方からまた事が起こる。クリスマスを横目で見やって、片付けでも、とようやく部屋を眺めたのは大晦日になってからか。その大晦日もあれこれと些事が重なり、手綱が切れた何とも今年らしい日ではあった。

だが、取りあえずは無事に年を越せる、年を迎えられる。遠いようであまりに近かったもののありがたいと思える年齢にはなったか。新年になって突然何が変わるというわけでもなく、名残になるのか更に波乱となるのか知らないが、まぁ起こるを興るとでも捉えれば良いし、振り返れば、別段辛い年だった、というわけでもない。

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花月

景色の移ろいを眺めていたつもりではいたがどうやら大きく抜け落ちていたようだ。時節のあれこれにようやく目処がつき改めて眺めてみれば雪は日陰に残るだけとなりフキノトウも既に開き始めていた。除雪されないため冬季不通となる林道も大小様々な枝が無数に横たわるものの気づけば車でも乗り越えられるほどの残雪となっている。空は近くなった。夜、空を見上げるも冬に入る前には疑いもなくこの季節を迎えると思っていた相手はいない。何百光年先から放たれた光は未だ変わらずここまで届いている。
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ひとつきあまり

気づけばこの場所に住み始めて丸一月経った。汗がまだ肌を覆うような夏の終わりに引っ越しを始めて、既に色づいた葉も落ち空が遠く映る初冬に入っている。未だ開封されていない荷物や始めてもいない修復が残っている。だがしかし暮らしの形は出てきたように思う。
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at under the bottom

 拾ったはずの文字が次々と消え、半ページ前のことすら記憶に繋ぎ止めておけずに本を捲る日々は、それでも時期的な問題と捉え、敢えて注釈を一々開かねばならない学術書を手に取ったが、一行すら進めない。何度も返る有様に、まるで漢文のようだと自嘲するも、意味すら取れずにただ反復しているだけとなれば、その余裕も失われる。いつからだったろうか、と思い返しても、明確に分かるはずもない。遣る瀬無い想いは、瞬間的な感情に身を浸すのには十分な理由であったと思う。そこから抜け出せなくなるとは思ってもみなかったが。
 恐れを、それが歳を重ねるということだと受け入れてきたが、知らぬ間に恐れを恐れていたようだ。毛細管を伝う血液のように重力にさえ逆い全身に広がっていた。世界が崩壊する夢をみても、誰がそれを持ち続けていられるだろうか。でも、確かに、そのような世界の上に立っているのだ。そんなことすら知らなかったのか、という声に、ずっと手の中にあった、と傲慢にもこたえるのが私だった。気づけば、この身体は鏡に映らない。手を伸ばしても、そこには主張すらしない境界が絶え間なく存在するだけだ。
 某企業CMではないが、努力が報われるとは限らないし、積み重ねてきたものも崩れてしまうこともある。それも一瞬と感じられる早さで。もしかしたらその時、世界を最もよく見ることになるのかもしれない。恨めしいほどの美しさと正しさで。
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