揺れ
一週間ほど前から起こっていた日中の小さな揺れに都度身を強ばらせていた。初めは地震かと思っていたが、耳を凝らせば遠く掘削機の音がする。外に出てみれば、すぐ日を遮るように立っているマンションを隔てた所でのことだったが、水の中で聞く音のように籠もっていた。掘削機のドドドッという音に合わせて部屋が、紙相撲の土俵のように小さく跳ねる、揺れる。地盤が固すぎるのだろうか。幾ら小さくても、原因が分かっても、小心者だからなのか、慣れることが出来ない。そんな中で実際の地震も頻発していて、どうにも心はどんどんと小さくなっていく。
煙草の臭いが急に酷く気持ち悪くなってやめようか、と考える。舌の上に残る焼けた野の気配も不快だし、どうにも首の後ろが重い。吸う前にどうして今吸うのかを一度考えてみて、と先日言われたが、そんなこと考えるようだったら吸わないよな、と思いつつも考えてもいて、その度に、今吸いたいから吸う、なんていう子供にさえ突っ込まれそうな子供じみた言い訳のようなものしか出てこないのも不服。銜えて吸うって、そんな…。で、1日は止めていたけれど、寝て起きるとすっかり忘れたように手にしていた。どうやら、ただ、体調が悪かったみたい。喉の奥が腫れて痛い。でも、臭いは気になる。